博物館・美術館

九段下で平和について考える〜遊就館、昭和館、しょうけい館〜

2年前、原一男監督「ゆきゆきて、神軍」(1987)を初めて鑑賞した。
そこで初めて、パプアニューギニアで戦争があったこと、そこがかなり壮絶な状況であったことを知る。

それからというもの、「戦争」「戦後」というものに興味を持ち、
映画鑑賞や読書や歴史的な場所を訪れたりすることで自分なりに勉強している。

今回、九段下にある、戦争に関わる3つの博物館を巡ってきた。
靖国神社にある「遊就館」、九段下駅近くにある「昭和館」そして「しょうけい館」。
それぞれ異なる視点から戦争を見ることができるため、ぜひ靖国神社参拝の際にはこの3つの場所に訪れてほしいと思う。

遊就館(靖国神社)〜戦争について〜

遊就館(ゆうしゅうかん)は靖国神社にある博物館。
明治維新〜大東亜戦争まで、日本の近代の戦争についての貴重な資料が展示されている。
実は靖国神社は、戊辰戦争の戦歿者を祀ったところからスタートしており、
なんと坂本龍馬や吉田松陰といった幕末の志士たちも祀られている!(知らなかった)

展示のボリュームとしては第二次世界大戦のことがかなり多い。
特に戦歿者(靖国神社では「英霊」と呼んでいる)たちの遺書は、読んでいると涙が出る。
他にも、戦地での無事を祈りが込められた「千人針」やお守りなど、当時の人々の願いが生々しく迫ってくる。

 

・・・これまで、私は靖国神社について、「よく知らないけれど、なんだかモヤモヤする」と思っていた。日本の政治家が靖国神社を参拝する度に、諸外国から非難の声があるから。
今回靖国神社を参拝し、遊就館の展示を見て回ったことは、
戦争によって亡くなった人々を神様として祀ることは、
古くからの日本の伝統であり、それが第三者の手によりもしできなくなってしまえば、
それは日本人にとってとても辛い、「心・誇りが奪われる」ことになってしまうのではないか?ということ。
まあ、政治家だったら諸外国からの声も加味して隠れて参拝する、とかでもいいじゃん、と思うが。。

靖国神社について、先の戦争について、「何かモヤモヤする、けれどよく知らない」という人にこそ訪れてほしい!と感じた。

遊就館

開館時間:9:00〜16:30
料金:大人1,000円、大学生500円、中学・高校生300円、小学生無料
靖国神社を訪れた際にはぜひ遊就館にも足を運んでみてほしい。

昭和館〜戦中・戦後の暮らし〜

靖国神社を出て九段下駅方面に降って行くと、右手にあるビルが昭和館だ。
遊就館が「戦争」の展示とすると、こちらの昭和館は「生活」に密着した展示になっている。

戦前、戦中、戦後と、変わりゆく生活、身の回りの品々。
戦中の金属類の拠出から、アイロンも陶製になったこと。食料が配給制になったこと。
服装の移り変わり。戦後のパン焼き器の普及。
焼け跡の中、バラックで暮らす人々の映像には驚いた(米国立公文図書館から入手されたものが多々)。動きのある映像で見ることで、(もちろんそうなのだが)私と同じ人が、その時代に生きていたことを再確認し、深く考えさせられる。

昭和館には、図書館や映像・音響室など、膨大な資料が収蔵されている。
何か資料を探す際にも役立ちそうだ。

昭和館2階ひろば(屋外)では、「うつりゆく昭和の九段下界隈」と称してミニ写真展が開かれていた。現在の様子と比較してみると興味深い。こちらも入場料不要のため、散歩がてら寄ってみるのも良いかもしれない。

昭和館

営業時間 10:00〜17:30
※月曜定休日
7F・6F常設展示室のみ入館料が必要。
大人300円、高校生・大学生150円、65歳以上270円。

しょうけい館〜戦傷病者の視点から〜

しょうけい館 ジオラマ

昭和館を出て九段下の交差点を渡ると、一本入ったところにしょうけい館はある。
しょうけい館は、今回訪れた3つの博物館のうち、最もショッキングな場所だった。

しょうけい館は、戦傷病者とそのご家族等が戦中・戦後に体験したさまざまな労苦についての証言・歴史的資料・書籍・情報を収集、保存、展示し、後世代の人々にその労苦を知る機会を提供する国立の施設です。
(しょうけい館パンフレットより)

しょうけい館の一角には、野戦病院のジオラマが設置されている。
リアルな等身大の人形が濁った目で宙を見つめている様子は、とても恐ろしい。人気のない博物館でジオラマブースに入った時は、思わずギョッとしてしまった。
自分はその人になってその苦しみ、恐怖を体験することはできないけれど(体験したくないけれど)、その一端を少し知ることができる展示に思う。

また、当事者の方々のエピソードを聞くことができるのもこの場所ならでは。
戦争の時だけではなく、その後何十年に渡り後遺症に苦しめられたこと、また、その中の一人は戦争+戦後にはハンセン病になり隔離施設に入って生涯を送ったこと・・・。

戦争反対、その思いを、もっと多くの人が実感として持たなければならない。
そのきっかけになる貴重な場所だと感じた。


しょうけい館
営業時間:10:00〜17:00
※月曜定休日
入館料無料

おわりに

この日はお茶の水まで歩いて帰った。
途中、神保町の古書店街でこんな本を見つけた。
一つの縁と思い購入して読み進めると、凄まじい当時の状況が垣間見えてくる。
ニューギニア戦線は「死んでも帰れぬ」と言われていたらしい。
ニューギニアから帰ってきた兵士が乗っていた船は、「季節は冬なのにボロボロの夏服で、気力はなく、まるで幽鬼のようだった」とも・・・。

それぞれの戦場で戦った人々、日本で暮らしていた人々、戦争を推し進めていった人々、侵略された側の人々、色々な側面を知って、どういう世の中に暮らしたいか、そのためには何をすべきか、自分なりの考えを持ち、行動したいと思った。

戦場パプアニューギニア

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