ペーヤの周辺には世界遺産に登録されている修道院が2つある。
1つは「ペーチ総主教修道院」、もう1つは「デチャニ修道院」
今回は、ペーヤを拠点にこれらの修道院を巡った際のことをまとめる。
どちらの修道院も危機遺産リストに登録されており、訪れることで、コソボの歴史や文化に興味を持つきっかけになった。
皆さんにもぜひ、この記事を読んでコソボの歴史や現状について興味を持ってもらえたら嬉しい。
コソボの危機遺産
今回訪れた2つの修道院は、どちらも「危機遺産リスト」に登録されている。
それには、20年前のコソボ紛争や、今でも人々の間に残るセルビアに対する意識が関係している。
20年前のコソボ紛争では、セルビアからの独立を求めてコソボに住むアルバニア人が戦っていた。20年というのはそう長い時間ではない。今でも人々の間には、戦争の記憶が刻み込まれている。
そして20年経った今でも、「ここはアルバニア人の土地だ!セルビア人は出て行け!」という気持ちを抱く過激派の人々も存在している。
今回訪れた修道院はセルビア正教会の修道院であり、もちろんここを利用するのはセルビア人。デチャニ修道院には、セルビアをよく思わない過激派によってロケット砲が撃ち込まれたこともあるんだとか。
現在はKFOR(コソボ治安維持部隊)によって守られており、特にデチャニ修道院の警備は厳重。修道院から数百メートルほど離れた場所にはバリゲードが設置されていて、観光客もそこを通らなければならない。また、入るにはパスポートチェックがある。
バリゲードの中に入る時には特に、民族の対立や紛争を、肌で感じた。
ペーチ総主教修道院

ペーヤの中心部から徒歩30分くらいの山の麓にあるセルビア正教会の修道院。
「コソボの中世建造物群」の一つとして2006年に世界遺産リストに加えられた。

教会に足を踏み入れると、内部に描かれたフレスコ画が自然の明かりに照らされ、キリストやマリア様、様々な天使たちの姿がぼんやりと浮かび上がって見える。
人工の明かりが一切ない教会の中。その薄暗さが、非現実感を醸し出していた。
緑あふれる庭には、全身黒い装束をまとった修道女たちが静かに歩いている。
関係者の子なのか、小さな女の子が遊んでいた。
静かにガラス越しに眺めていたいような、美しい風景だった。
デチャニ修道院

ペーヤからバスで約30分、そこからさらに徒歩30分ほどの山あいにあるセルビア正教会の修道院。
2004年に単独で世界遺産に登録され、2006年には他のいくつかの修道院とともに「コソボの中世建造物群」として拡大登録された。
教会の中に入ると、内部は一面色彩豊かなフレスコ画で埋め尽くされていた。この教会のフレスコ画は、ビザンチン様式の現存最大のものだとのこと。一つ一つの絵は、聖書の一場面だろうか?いつまでみていても飽きない。
この修道院にたどり着くまで、ものものしい雰囲気のバリゲードを通り抜けたり、修道院の前では治安維持部隊にパスポートを預けたりしなければならなかった。敷地内に入った後も、あまりウェルカムな雰囲気を感じられなかった。むしろその逆。
ここまで警備が厳重なのは、危機遺産に登録されているから。
昔、アルバニア人の過激派によってロケット砲が撃ち込まれたこともあるらしい。
一見平和そうに見えるコソボだが、今でもセルビアに対して良い印象を持っていない人もいる。民族の対立の根深さや、まだ紛争が終わってわずか20年しか経っていないことを身にしみて感じた。
ペーヤからは、プリスティナ行きのバスに乗って行き先を運転手さんに告げれば、途中で降ろしてもらえる。